a boy meets a girl

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まるで世界の終わり。 見渡す限り、闇。何も見えない。何も聞こえない。 いや、聞こえるとすれば、ギィギィと耳障りな音を立てる窓。 老朽化が進み、取り壊しが決まった旧校舎は、もう随分前から立入禁止となっていて、誰の出入りもない。 一時期は、お決まりのように心霊スポットとともてはやされはしたが、今ではもう人々の記憶から消え去っていた。 暗闇に目が慣れ、おぼろげながら周りの風景が浮き上がってくる。 所々にコンクリートのひび割れ、今にも落ちてきそうな照明、外から吹き付ける風のせいで、先ほどから嫌な音を立てているオンボロな窓。 普通の感覚なら、こんな場所で一人なんて考えられない。恐怖に足が竦む。 しかし、人とは不思議なもので、恐怖を感じなければ何であろうが関係ない。 どんなことだってできるし、どんな場所にだって行ける。 現に、今のボクがそうだった。 恐怖なんて感じない。 嫌というほどの絶望を味わった後には、もう何も残らない。 使い物にならなくなった足を引きずりながら、ボクは階段を上っていた。 もう痛みさえ、感じない。 上手く動かない足で、やっとのこと最上階に辿りつく。 案の定、屋上への扉の鍵は壊れている。 ボクの顔には安堵のせいか、笑みが零れた。 これでやっと…。 ギギィーーーッと派手な音を立て、扉は開いた。 強い風が吹き抜ける。 埃が飛び散り、ボクは腕をかざして目を閉じた。 そして、風が止んだのを確認し、ゆっくりと目を開ける。
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