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「…なんでこんなこと書かれてんの?」
掲示板のあまりにも酷い誹謗中傷は、全て彼女に向けられていた。
これを初めて彼女が目の当たりにした時、彼女はどう思っただろう?どんなに傷ついただろう?
──想像を絶する。
「友達のね…好きな人に、告られた」
「…」
「頼まれて、いつも一緒について行ってた。そしたら、何故か向こうに誤解された。…あたしがその人を好きだって」
彼女の声が震える。
そこから先は簡単に想像できた。
彼女の友達は、彼女を非難した。
自分の好きな相手を横取りした、お前なんてもう友達じゃない、大きな罰を受けるといい、思い切り後悔するといい。
周りの人間をも巻き込んで、彼女をよってたかって輪から弾き出した。
弾き出すだけではなく、彼女の尊厳をも貶めた。
掲示板の中の彼女は、完全に悪女と化していた。
見境なく男を漁る、誰にだってなびく、金のために身体を売る、陰でクスリをやっている、よくまぁ次から次へと思いつくものだ。
ボクの目の前にいるのは、この小さな画面の中に書かれているような人間とは、似ても似つかない。
彼女の顔を、食い入るように見つめた。
ここにいるのは、少し気が強くて、でも弱い、そして心優しき一人の少女。
ボクを激しく怒鳴りつけながらも、痛む足を庇うボクの手に自分の手を添えてくれた。
「よくここまで嘘ばっか書けるもんだな」
「…っ」
堪えきれず、彼女が嗚咽する。
彼女の心を少しでも軽くしたい、でも、どうすればいいのかわからない。
もどかしくなりながら、ボクは彼女の頭をそっと撫でる。
「み…んな…ここ…書いてる…の…信じてる…のに…」
「よっぽどバカなんだな、どいつもこいつも」
「クラ…ス…の…子も…」
「…」
「…とも…だ…ち…も…」
友達も?
強い怒りがボクを突き動かした。
力任せに彼女を引き寄せ、思い切り抱きしめる。
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