a boy meets a girl

7/10
46人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「…なんでこんなこと書かれてんの?」 掲示板のあまりにも酷い誹謗中傷は、全て彼女に向けられていた。 これを初めて彼女が目の当たりにした時、彼女はどう思っただろう?どんなに傷ついただろう? ──想像を絶する。 「友達のね…好きな人に、告られた」 「…」 「頼まれて、いつも一緒について行ってた。そしたら、何故か向こうに誤解された。…あたしがその人を好きだって」 彼女の声が震える。 そこから先は簡単に想像できた。 彼女の友達は、彼女を非難した。 自分の好きな相手を横取りした、お前なんてもう友達じゃない、大きな罰を受けるといい、思い切り後悔するといい。 周りの人間をも巻き込んで、彼女をよってたかって輪から弾き出した。 弾き出すだけではなく、彼女の尊厳をも貶めた。 掲示板の中の彼女は、完全に悪女と化していた。 見境なく男を漁る、誰にだってなびく、金のために身体を売る、陰でクスリをやっている、よくまぁ次から次へと思いつくものだ。 ボクの目の前にいるのは、この小さな画面の中に書かれているような人間とは、似ても似つかない。 彼女の顔を、食い入るように見つめた。 ここにいるのは、少し気が強くて、でも弱い、そして心優しき一人の少女。 ボクを激しく怒鳴りつけながらも、痛む足を庇うボクの手に自分の手を添えてくれた。 「よくここまで嘘ばっか書けるもんだな」 「…っ」 堪えきれず、彼女が嗚咽する。 彼女の心を少しでも軽くしたい、でも、どうすればいいのかわからない。 もどかしくなりながら、ボクは彼女の頭をそっと撫でる。 「み…んな…ここ…書いてる…の…信じてる…のに…」 「よっぽどバカなんだな、どいつもこいつも」 「クラ…ス…の…子も…」 「…」 「…とも…だ…ち…も…」 友達も? 強い怒りがボクを突き動かした。 力任せに彼女を引き寄せ、思い切り抱きしめる。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!