プロローグ

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なにを間違えたんだろう。なにかがあるから生まれてきたんじゃないのか? 世間で言うなにかを築き、愛を育て、そして一生と共する。 それを放棄したモノは、なにになるのか ……。 (恋してなんになる……愛してなんになるんだ……) 「馬鹿馬鹿しい…」 (こんな腐って醜い遺伝子なんて、朽ちてしまえばいい) たが、心は裏腹に身体の欲を満たそうとする。空っぽの心に、その日限りの愛の言葉や、薄っぺらい繋がりを詰め込みいっぱいする。そして…その日限りの相手は、俺に空虚な痛みを残し去っていく。それで満足なのだ特定などいらない。そう、もうあんな滑稽な真似はしない。 あの男は、俺に愛を語り、追って盲目になるほど心を支配した。最後……あの男の手練手管で翻弄された心を、刃物のような感情で抉り、踏みつけて去っていった。 (信じていたのに…) それ以来、心に深く傷を負ったまま。なにがいけなかったのか……あの男が去った後、生活に影響がでるほど考えた。荒れた生活を繰り返すうち、心は膿み始めて……今では、身体の快楽だけを求めるようになっていた。 (去った後に気づいたんだ。大切な人だったんだって……)
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