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 その生徒手帳の中の写真は、まだ誰も見たことがない。  前世の『俺の放課後が彼女に乗っ取られかけている件』の中でも、写真の表が描かれることはなかった。  写真を見せてって彰に言っても、減るから嫌だって言われるんだよなあ。  もちろん、彼女を紹介してもらったこともない。  親友だというのに、薄情なんじゃないかと思うこともあったが、『俺の放課後が彼女に乗っ取られかけている件』でも頑なに誰にも見せなかったので、彰はそういう設定なんだと諦めていた。  その彼女の写真が、今、無防備に手の届く場所にある。  ……ちょっとだけ。  ちょっとだけならいいよな?  彰の彼女がどんな顔なのか非常に興味があった。  人間、隠されれば隠されるほど見たくなる生き物である。  これは自然の摂理。  見たくなっても、見てしまっても、仕方がないのだ。  俺は生徒手帳にゆっくりと手を伸ばす。  彰の彼女はどのパターンが当てはまるだろうか。  絶世の年上美女か?  それとも、とんでもない不細工か?  とりあえず、ラノベパターンとして、美少女はあり得ないだろう。  主人公の身近にイケメンを配置するのだから、美少女の彼女まで作って、読者の嫉妬を煽ったりはしないはずだ。  その点で、人気のあまりない年上キャラは都合がいい。  ラノベだけではなく、漫画でも使われる設定だ。
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