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 生徒手帳を開いて写真を見た俺は、思わずすっとんきょうな声が出た。 「え? は?」  目の前にある光景が受け入れられなくて、俺は生徒手帳をいったん閉じる。 「えーと……」  生徒手帳の紺色の表紙をじっと見つめながら、俺は頭を整理しようとした。  今、見たものは……。  えー……と……。  整理しようとしても、頭は全く整理されない。  考えたくても、頭の中が真っ白だった。  いやいや……。  もしかしたら、見間違えってことも……。  生徒手帳は閉じていて、今は写真は見えない。  生徒手帳を開いた時に写真をじっくり見たわけではないから、きっと見間違えもあり得るはず。  ほら、あれだ。  見たのが一瞬で、光の角度とか色々あって、写真の人物が歪んでそう見えただけだ。  見間違い。  そうに違いない。  うんうん。  もう一回、写真を見れば、なーんだ全然違うじゃないかと笑い飛ばせるはず。  俺は生徒手帳を開くために、もう一度、生徒手帳の端を掴んだ。  あ、あれ?  指先が震えて、うまくページが捲れない。  やけに喉が渇き、俺は喉を潤すために唾をゴクリと飲み込んだ。  ……ええい、ままよ!  俺は思いきって、勢いよく生徒手帳を開いた。  そして、そこには……。  俺がいた。  見間違いではなく。  勘違いでもない。  確かにそこには俺がいた。
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