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 生徒手帳に挟まっていたのは、今より少し幼い俺の写真。  たぶん中学一年の頃。  写真の背景には覚えがあり、それは中学校の校舎内で、窓を背にしてカメラ目線で笑っている俺が写真に写っていた。  つまり……。  彰がマイエンジェルと呼んでいたのも。  マイスイートハニーと呼んでいたのも。  全部、俺だった。  彰が可愛くて可愛くてたまんないと言っていたのも。  今すぐ抱き締めて離したくないと言っていたのも。  全部、俺だった。  毎日、写真を出しては、人目をはばかることなくキスしまくっていたのも。  全部、俺の写真にしていたのだ。  受け入れられない、受け入れたくない目の前の真実に、俺はどうすることも出来ず、ただ写真を見ていた。  そして、茫然としていたせいで、俺は後ろから近付いてくる気配に気付くことが出来なかった。  いきなり肩にポンと手を置かれて、俺の身体がビクリと跳ねる。 「写真……。見たんだな」  少し低めの声が、後ろから聞こえて来る。  見なくても声の主は分かった。  だって三年間ずっと友達だったから。  嬉しいことも。  悲しいことも。  楽しいことも。  何でも分かち合って、何でも話してきた親友だったから。  仲良くなりすぎて、何でも分かるとまで思っていた。  けれど、それは全て間違いで……。  彰の言葉に俺は何も返せない。  どんな顔をすれば良いのか分からなくて、俺は振り返ることも出来なかった。  写真を持ったまま固まっていると、彰が後ろから近付いて、俺の耳のそばで呟いた。 「覚悟しろよ」  立てては行けないフラグが、立った音がした。  end
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