番外編 佐竹清人に関する考察~清香の場合

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「その……、お兄ちゃんからメールで……、『奢るって言う相手の顔を、変な遠慮して潰すなよ? お前が恐縮する気持ちは分かるが、仮にも一人前の社会人なら、相手が負担に感じる様な最上級コースとかは間違っても注文しない筈だからな。安心して奢られろ』だそうです」 「……はは、それはまあ、一番安い物を頼んだりはしないけど、一番高額なコースを頼んだりしたら、清香さんが負担に思う位分かっているよ?」  ヒクッと顔を引き攣らせながら聡が応じると、清香が救われた様に聡に笑顔を向ける。 「ですよね? やっぱり良く分からないので、注文は聡さんにお任せします」 「……ああ」  それから終始笑顔の清香に対し、聡はさり気なく周囲に視線を向けながら、落ち着かない気持ちで食べ終えたのだった。  昼食を食べ終えて場所を移動した二人は、四季折々の花が整えられている庭園が有名な公園に来ていた。そこを散策しながら、清香が横を歩く聡を見上げて話し掛ける。 「さっきの桜並木、綺麗でしたね」 「ああ、やっぱり桜を見ないと春になった気がしないね。この先にある、ここのバラ園も結構有名なんだよ? 見ごろの時期になったらまた来ようか?」 「はい、是非!」  互いに満面の笑みを浮かべながらそんな事を会話していると、再度バッグの中から携帯電話の着信音が流れてきた。 「え? 誰からだろう?」  怪訝に思いながら携帯電話を取り出した清香は、ディスプレイに浮かんだ名前を見て、聡に断りを入れる。 「すみません、お兄ちゃんからなので、出ますね?」 「……どうぞ」  何とか鷹揚さを醸し出しながら聡が応じると、清香は不思議そうに電話の向こうに向かって問いかけた。 「もしもし、お兄ちゃん、どうしたの?」 「いや、たった今、何となく胸騒ぎがしてな。無事か?」 「無事かって……、いきなり変な事を言わないで。どんな胸騒ぎだって言うの?」  幾分気分を害した様に清香が言い返すと、清人はいかにも申し訳なさそうに言葉を継いだ。 「その……、清香と一緒にいるそいつの頭の上に、何か落ちる様な気がしてな。何事も無ければそれで良いんだ。デートの邪魔をして悪かったな。それじゃあ」 「あ、お兄ちゃん、ちょっと!?」 「どうしたの?」  慌てて問い返そうとして憮然とした顔で耳から携帯電話を離した清香に、聡が不思議そうに問い掛けた。それに清香が溜め息混じりに応じる。
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