101人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
「ですから、タライだって頭に当たったら痛いし、下手すれば怪我をするじゃないですか? だからお兄ちゃんが無意識に聡さんの危機を察知して、それを教えてくれたんですよ。『血は水よりも濃し』って本当ですよね。すっかり感動しちゃいました! 兄弟仲良く語り合うのも、そう遠い未来じゃないです!!」
(それ、どう考えても無理だから。そもそも危険を察知したわけじゃ無くて、寧ろ危険な状態に陥れているし……)
清香以外の全員がほぼ同時にそんな事を思い浮かべたが、自分の考えに浸りきって満足げな清香に告げても無駄な事だと分かっていた為、誰も否定しなかった。
そこで座卓の向こう側から、上機嫌な総一郎の声がかかる。
「おい、清香! 早くこっちに来んか!」
それに清香が慌てて立ち上がりつつ応じた。
「あ、は~い、今行きます! じゃあ、お祖父ちゃんに呼ばれたから行きますね?」
「ああ、相手を宜しく」
「しつこいけど許してやって?」
「分かってます」
皆に軽く断りを入れてから笑顔で清香が離れて行くと、他の皆はドッと疲れが出た様な溜め息を吐いた。
「もう、どうにでもしてくれって感じだな」
「何がどうしたら、公園で金タライが落ちてくるのか突っ込もうよ……」
「いや、それより、自分経由で清人さんが聡君にえげつなく脅しをかけてる事に、清香ちゃんまだ全っ然、気付いてないよな?」
「血縁者と認識した故の愛で、感覚が鋭敏になってるわけ無いだろう……。どうして清人さんが、自分達のデートを監視しているって発想にならないんだ? 謎だ」
「相変わらずの、信頼っぷりだよな。しかし清人さんもやるとやったらトコトンだな。自分の行動の一挙一動を監視されてたなんて分かったら、清香ちゃんがショック受けそうだ」
正彦がしみじみと漏らした呟きに、玲二が思わず真顔で応じた。
「それは受けるだろうな…………。俺だってあの時、かなりの心理的負担とショックを受けたし」
「え? あの時って、何の事? 玲二」
「どういう事だ? まさか以前、清人に何かされたのか?」
しかしここで鋭く姉と兄が突っ込んできた為、自分が何を口走ったかを自覚した玲二は、慌てて笑顔を取り繕った。
「あ、いや~、別に、大した事じゃないから」
「玲二?」
笑って誤魔化そうとしたものの、真澄と浩一、両者から鋭い追及の視線を向けられた玲二は、潔くこれ以上隠すのを諦めた。
最初のコメントを投稿しよう!