【一刺し】

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 それから筋彫り(デザインのラインを彫る工程)、ボカシやツブシ(影や色入れ)と続くのだが、清水が希望したものは『どんぶり』『臥煙(がえん)彫り』とも呼ばれている顔をのぞいた首から下、手首から上、足首から上の胸、背中、腕や足まで全身すべての皮膚を彫る総身彫り。  墨を入れるだけでも何百時間もかかる上に、刺青というものは、健康面や衛生面、そして、仕上がりの面においても、毎日施術出来るものでもない。  先端に針を束ねた棒状の道具で肌を刺して色素を入れていくものが刺青なのだから、当然のことながら、皮膚や肉を傷つけているわけだ。  化膿しないようにすることは勿論のこと、せっかく入れた色が飛ばないようにアフターケアは必須であるし、かさぶたも当然出来る。  一回施術したら、数日間は肌を休ませた方が色も安定する。  彫る側も彫られる側も、集中力や体力に限界があるのだから、一回の施術時間にも限りがある。
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