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作業台一面に和紙を敷き終り後ろに振り返ると、何かを訴えかけるような目で立ち尽くす清水の背後にユラリと黒い何かが揺らめいた気がした。
その瞬間、伊織の耳をザラリとしたモノが舐めるような、何とも言えない不快な声が鼓膜を震わせた。
「恩にきるわ――――」
この部屋には清水と自分だけしかいない。
にも関わらず、ここで聞こえるはずのない女の声に、足元からブワッと粟立つものを感じながらも、伊織はもう後には戻れないということを感じていた。
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