【四刺し】

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 彫る痛みが我慢できなくて、後々の苦痛に耐えられるわけがない。  だとしたら、返事は一つ。  普通に答えるのも面白くないと思い、医師免許を持たなくては麻酔薬を取り扱うことが出来ないことをネタにして、冗談交じりに、「モグリの医者の扱う麻酔薬なんて、刺青を入れるよりも怖ぇよ。さっさと彫ってくれ」と言うと、穏やかで落ち着いた雰囲気の伊織がここにきて初めて大笑いをした。 「それを言ってしまえば、清水さんはその『モグリ』とやらに刺青を依頼しているんですけどねぇ」  笑い終えたあと、ニヤリとした笑みを顔に貼り付けて清水の顔を覗き見た。
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