【一刺し】

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 安全に。  しかも、美しく仕上げるには様々な条件がある上に、清水は立場上、忙しい身でもあった。  頻繁に伊織の元を訪れることも出来ず、総身彫りを依頼してから三年以上の年月をかけてようやく先日完成したところ。  伊織は清水がその最後の仕上げに来た時からずっと恐れていた事が、今まさに現実となってしまったことを嘆いていた。  清水がここを出ていった日は、確か三日月……あれから十二日。  満月の夜。  生きとし生けるものだけでなく魑魅魍魎の類まで、多くのもの達が多大なる気を吸収し、力を増す時。  衝動的であり行動的な感情が増す時。  制御出来ない巨大な重力、抗う事の出来ない運命の歯車。  満月にはその美しさに反した、秘めたるパワーがある。
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