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「さぁ、楽にしていてくださいね」
いよいよか。
清水は伊織とは反対方向に顔を向けた。
元々、注射なんかも大嫌いで、針が腕に刺さるのを見るだけで今でもゾッとする。
痛みには堪えられても、自分の体に針が刺し込まれる様子を好んで見る趣味は無い。
ゆっくり目を閉じ、その時を待つ。
伊織は清水の背中に描かれたがしゃ髑髏を見つめ、静かに息を整えた。
盛り上がった棘下筋や、鍛え上げられた広背筋。
呼吸をする度に上下運動を繰り返しているのを見ると、そこに描かれたがしゃ髑髏が、まるで息づいているようにも見える。
命を宿しているようにも思えるその絵に手をかざし、伊織も静かに瞼を閉じた。
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