342人が本棚に入れています
本棚に追加
「はじめます」
聴覚から伝わる刺激が清水の脳へと伝わり、「今から痛みがくる!」と身構える前にノミを突き刺す。
注射の針が刺さるような痛みが走ったかと思うと、次から次へと押し寄せる切れ味の鈍いカッターやシャーペンの先でガリガリと強く引っ掻かれているような不快な痛み。
我慢出来ないものではないどころか、想像していたものより遥かに軽い痛みに拍子抜けするほどだ。
それよりも、鼓膜を震わせるというよりも、皮膚の内側から聞こえるチッチッチッという軽妙な音が、心地がいいんだか悪いんだか分からない奇妙な感覚を与えてくる。
1秒間に3~4回という一定のリズム。
突いて、上げて、抜く。
突いて、上げて、抜く。
単純作業ではあるが、同じところを何度も突くことなく、それでいて、僅かな隙間なく下書きに沿ってスムーズに動かしていく。
最初のコメントを投稿しよう!