【四刺し】

19/19
339人が本棚に入れています
本棚に追加
/432ページ
 会話でもしていなくては、時間が一向に過ぎる気配がないようにも感じられた。  だが、背中に気迫あふれるオーラをひしひしと感じれば、彼の顔を見なくとも、伊織が彫ることだけに、ただ一心に集中していることが分かるので、話しかけることも躊躇われる。  話しかけようか、かけまいか躊躇しているうちに時間は過ぎていく。  結局、静まり返った静寂な空間の中で、互いの呼吸音と皮膚を跳ねるノミの音を聴いているうちに、いつの間にか睡魔に襲われていた。
/432ページ

最初のコメントを投稿しよう!