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私は国会議員としてとして何期も務めてきたが、地元の建設会社からの莫大な献金を受けたとして今は長年の政治生命を絶たれようとしている。
政治家というのは、その多くが莫大な金を目の前にしてしまうと、もともと持っていたこの国を良くするんだ立て直すんだ!という気持ちが薄れ、次第に次の選挙で必ず当選することだけを考えるようになる。何期も当選してくると、しがらみが生まれる。
いたるところから金の話をされて、自分の金なのか公の金なのか分からなくなってくる。
私の政治家としての生涯はこれで終わりなのだろうか。
そんなことを考えながら、夜の公園をウオーキングしている。私は、考えごとがあるとひたすらに歩くようにしている。目の前にアルミ缶が落ちていた。
私は何気なくその缶を歩道の茂みに蹴り入れた。
その時歩道の脇の段ボールからうなるような声がした。
「おい!おれの売り物蹴りやがって!!」
段ボールからできてきたのは、年齢にして50代だろうかホームレス男が顔だけ出してきた。
「おっと失敬。歩道に落ちていたから、つい蹴ってしまった」
「おう!気を付けろ!おれの生命線なんだかろよ」
アルミ缶が生命線か。段ボールハウスの横には多くのアルミ缶が潰されていた。これを業者に売って、いくばくかの収入を得ているのだろう。
「あれ?あんた見たことあるな」
ホームレスの男が私の顔をまじまじとみてくる。
「あんた、もしかして最近話題の政治屋さんだろう?」
政治屋か...。たしかにそうかもしれない。信念を忘れた政治家は政治屋に成り下がるのだ。
「いえ、人違いでは...」
男は私の発言を遮った。
「まあ、人違いだったとしてもよ、ちょっくら聞いてくれよ。おらあ、昔はおれもゼネコンであんたみたいなお偉いさんをさんざん接待したもんさ。何人もの政治家や官僚を見てきたけど、長年やっているやつぁみーんな同じだ。どうにかして、自分の懐に金を入れるのかを考える。それが満足すると、誰彼構わずえばりたがるんだ。」
私は黙って男の話を聞いていた。嘘を言っているようではない。
「おれ言いてえのはよ、政治家なんてのは誰がやった手同じなのよ。だから、長年やったんならよ、すんなり辞めて熱意ある若いのに任せりゃいいのよ!んじゃな!!」
すんなり辞めちまえか。
おれも年だ、それもいいかもな。
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