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そしてノンアルコールワインを持って来て貰った二人は改めて乾杯し、どこか照れ臭そうにしながら食事を再開した。それからは和やかに食事を続けた二人だったが、デザートと一緒に出された紅茶を飲んでいた真澄が、ふと動きを止めてカップの中身をぼんやりと眺めた。その様子を少し眺めてから、清人が慎重に声をかける。
「真澄? どうかしたのか?」
その如何にも心配そうな表情を目の当たりにして、真澄は思わず失笑した。
「そんなにびくびくしないで? まるで私が苛めているみたいじゃない。ちょっと考え事をしていただけよ」
「それなら良いんだが……、何を考えていたんだ?」
不思議そうに問い質した清人に、真澄は感慨深げに言い出した。
「どうして清人と結婚できたのかしらと思って。去年の今頃どころか、つい半年前までは、間違ってもこんな風になれるなんて、夢にも思ってもいなかったもの」
「それは俺も同感だな」
神妙に頷いて同意を示した清人に、真澄が真顔で考えを述べる。
「それで……、色々考えてみたんだけど、突き詰めてみたら聡君が清香ちゃんに接近してきた事がきっかけかもしれないな、と思ったの」
「……あいつが?」
途端に納得しかねる様に僅かに顔を歪めた清人だったが、真澄は穏やかに言い聞かせる様に続けた。
「だってその前までは、清香ちゃん絡みで何かある時位しか直接顔を合わせていなかったでしょう? だけど聡君を牽制する過程で、あそこのマンションを訪ねる機会が段違いに増えたし、連絡を取る機会も増えたし」
「それはまあ……、考えてみれば確かに、な」
不承不承頷いた清人に、真澄が苦笑しながら続ける。
「聞けば夏のバカンス会も、私達をあわよくば纏めようと、皆で画策したみたいだし。それも、そもそもは清香ちゃんが、小笠原家であなたの縁談を持ち掛けたのがきっかけだったらしいし」
「全く……、余所様の家で何を喋っているんだ清香は」
深々と溜め息を吐いた清人に、真澄は笑って結論を告げた。
「だから聡君に、何かお礼がしたいと思ったんだけど、清香ちゃんとの事を応援したら清人が怒るでしょう? だから匙加減が難しいなと、少し困っていたのよ」
悪戯っぽく笑いながら言われた内容を聞いて、清人は破顔一笑した。
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