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「真澄ちゃん、良~く覚えておきなさい。今時、巷には似非お姫様がうようよしてるから、めぼしい王子様なんて忽ち狩られて、寄ってたかって食われちゃってるの。だから大人しく待ってるだけじゃ、いつまで経っても誰も迎えになんか来てくれないのよ? だから本当に良い男は、自分から捕まえに行かないといけないって、相場が決まってるの」
「……おうじさま、ますみのところにこない?」
「残念ながらね」
「ふ、ふえぇっ……、お、おうじさまぁぁ……」
正直、香澄から言われた事の半分も理解できなかった真澄だったが、“王子様は自分を迎えに来ない”という内容だけははっきりと分かってしまった。
祖母に負けず劣らず大好きな叔母から言われた事でもあり、多大なショックを受けた為、真澄はぐすぐすと泣き始める。流石にこの状態を放置できず、澄江は真澄を宥めつつ香澄を激しく叱責した。
「あぁ真澄、泣かないで。真澄も大人になったら、ちゃんと素敵な人が迎えに来てくれますよ? ……香澄!! お前もまだ中学生の癖に、知ったかぶりで無責任な事を子供に吹き込むんじゃありません!」
「あら、だって言い寄ってくる男なんて、本当にろくなのが居ないじゃない。大人になる前にちゃんと男を見る目を養っておかないと、とんでもないのに引っかかるわよ? そんな事にならないように現実を直視させておこうっていう、優しい叔母心なのに」
反省する色は皆無でしれっと言い返す娘に、澄江は本気で頭痛を覚えた。
「全く……、あなたって子は。小さい頃はあんなに素直で、手がかからない子だったのに……」
「う~ん、そんな事言われてもね~。この家が普通一般のそれとはかけ離れてて、群がる人間から色々影響受けちゃったから仕方が無いんじゃない?」
肩を竦めつつ、淡々と言ってのけた香澄に、思い当たる節がある澄江は僅かに眉をしかめて黙り込み、それ以上は何も言わなかった。そして急に静かになった事に不安を感じた真澄が、顔から手を離して両目を真っ赤にしながら澄江と真澄を交互に見やる。
「おばあさま? かすみちゃん?」
そこで香澄が改めて真澄を正面から見据えながら、真顔で問い掛けた。
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