80人が本棚に入れています
本棚に追加
「真澄ちゃん。真澄ちゃんは本当に王子様に迎えに来て貰いたい?」
「うん! すてきなおうじさま」
その問い掛けに真澄が涙を引っ込めて力強く頷くと、香澄は相槌を打って続けた。
「じゃあ真澄ちゃんも、王子様が迎えに来るまで、ずうっと素敵なお姫様でいなくちゃいけないのよ?」
「うん、がんばる! ……でも、すてきなおひめさまって、どうすればいいの? かすみちゃん」
「簡単よ。背中で飼ってる猫を、ずーっと大事にしてればいいの」
「……ねこ? せなか?」
それを聞いた真澄は首を傾げ、頭の上にクエスチョンマークを何個も浮かべる様な表情を見せたが、その意味する所を悟った澄江は小さく噴き出した。
「ふ、ふふっ……。確かに香澄は被ってはいないから、もう手遅れねぇ」
「……お母様、一言余計よ」
今度は逆に嫌そうな顔をした香澄に、真澄は途方に暮れた様に問い掛けた。
「かすみちゃん……、ますみ、ねこかってないよ? おとうさまにおねがいしないとダメ?」
それに対し、年長者二人は苦笑して付け加えた。
「真澄、それは生きている猫の事じゃないから、心配いらないわ。真澄が今まで通りずっと良い子だったら、何も心配要らないから」
「そうよ。真澄は私と違って素直で優しい性格だと思うから、よっぽどの事がない限り反抗心なんて芽生えないでしょうしね」
「……ほんとうに、だいじょうぶ?」
まだ幾分心細い様子で確認を入れてきた真澄に、澄江と香澄は笑顔で請け負った。
「ええ、大丈夫よ、真澄」
「安心しなさい。いざとなったら王子様の一人や二人、私が引き摺ってきてあげるから」
「香澄……、だからあなたは一言余計なのよ」
そうして澄江と香澄が笑い出し、それに釣られて真澄も笑って、その話は無事に終わったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!