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常にはしない乱暴な口調で、悪態を吐きつつ立ち上がった真澄がドアノブに手をかけた為、危険な物を察知した玲子は慌てて娘を止めようとしたが、一瞬遅く間に合わなかった。
「何をやっているんですか、お祖父様!!」
両開きのドアを勢い良く開け放った真澄は、そう絶叫しながら応接間に乗り込んだ。室内の男達が揃って固まるのにも構わず般若の形相で迷わず進み、祖父と絨毯の上に転がっている少年の間に割り込む。
すると自分の行為が流石に褒められたものではないと理解していた総一郎が、孫に向かって弁解を試みた。
「ま、真澄っ! これは、その……」
しかし中腰で弁解を始めた総一郎を、顔の高さがほぼ同じになっていたのを幸い、真澄が情け容赦なく渾身の力を込めてその左頬を平手打ちした。
バシィィッ……ともの凄い衝撃音と共に、呆気なく総一郎が床に転がり、周囲の者が揃って唖然とする中、真澄が思うまま鋭く叱責する。
「一人をよってたかって袋叩きにするだけでは飽き足らず、いい大人が子供に怪我をさせるとは何事ですか! 恥を知りなさい!!」
普段は自分の言う事に逆らわず、大人しく従っているたった一人の可愛い孫娘に殴り倒された事だけでも衝撃だったのに、口答えを通し越して叱りつけられた総一郎は、殴られた頬を押さえて一瞬呆然自失状態に陥ったが、何とか怒鳴り返した。
「う、五月蠅いわ! そもそもこのクソガキが、儂らの邪魔をするのが」
「仮にも一流上場企業のトップが、ご自分の立場も弁えずに自宅で乱闘騒ぎだなんて、恥ずかしいにも程があります! ……第一、これを入院中のお祖母様が知ったら、間違い無く即刻離婚ですよ?」
そこで目つきを険しくして凄んだ真澄に、総一郎以下の面々が真っ青になる。
祖父や父達が懇願してきたのを真澄は冷たく言い捨てて無情に切り捨て、離れに追い払ってから漸く肩の力を抜いた。
「さて、と……」
そして床に膝を付いて倒れていた男の子を真正面から眺めた真澄は、密かにその場にふさわしく無い感想を抱いた。
(あら……、結構顔立ちが整ってる、綺麗な子ね。来ている服は随分くたびれてるけど……。それにあまり賢そうでもないわね。唇を噛みしめてるから、血が出ちゃってるし)
結構容赦の無い事を考えながら真澄はスカートのポケットを探り、自分のハンカチを取り出した。
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