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「色覚異常の一種です。視力はそのままで、色だけ判別がつかなくなります。
世界的にも珍しい症例で、原因も治療法も不明です」
私が落ち着いて理解できるように、遠回しに医者は病について説明しましたが、つづめるとそういうことでした。
近いうちに色が分からなくなる。
赤も青も黄色も失われ、やがて私の視界はモノクロームに閉ざされる。
その時の絶望たるや、言葉になりませんでした。
これまで独身を通し、支えてくれる家族を作らなかった私は、詫びしい独り住まいの自宅に戻った途端、声を出して泣きました。身も世も無く。何故私がこんな目に、と我が身の不幸を嘆きながら、マンションの薄い壁をすら呪いました。
病気などとは無縁な人々の、生活音が聞こえてくるのです。
彼らは私にお構いなしに、平凡で幸せな日常を送っているのでしょう。
右隣に住む中年夫婦の穏やかな生活音も、左隣に住む若者の軽薄な生活音も、私のぼろきれとなった精神を苛みました。
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