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「ケイン殿から例のお話を伺った時点で、二件の調査を依頼されました。まず一つはパーデリ公爵とグリーバス公爵の他に、ラグランジェ国と通じている貴族のあぶり出し。もう一点は、それらの家から近衛騎士団に推薦されて入団している者のリストアップです」
それに彼は少々驚いた様に問い返した。
「パーデリ公爵とグリーバス公爵以外にも、繋がっている貴族がいると?」
「いない方がおかしいかと。両者とも社交界ではあまり評判が良くありませんし、影響力も今一つですから、欲得ずくで同類を仲間に引き込むかと思いまして、調べさせました」
カーネルの代わりにアルティナが答え、それを聞いたガウェインは苦笑した。
「相変わらず辛辣だな。それで、その結果がこれか?」
「はい。勿論、確たる証拠などは掴んでおりませんが、縁戚関係や最近の交友関係、利害関係などを鑑みて、ドレイン侯爵、シュレス伯爵、リドニア伯爵、マース伯爵が該当するかと」
真面目な顔でカーネルがリストを読み上げると、全員が揃って渋面になった。
「世の中、意外に馬鹿が多いな……」
「うん? ちょっと待て。そのメンツの領地って……、確かこの王都を含む直轄領から、ラグランジェ国に至る国境までの道筋上に、全部あるんじゃないのか?」
国境警備や巡視を担当し、国内を隅々まで知り尽くしている赤騎士隊隊長のエルマーが、脳内の国内配置図と、たった今挙げられた名前を照らし合わせながら口にすると、カーネルが面白くなさそうに応じる。
「どうやらそうみたいですね。ラグランジェの狸親父は、それなりに本気みたいです」
「くそ野郎どもがっ……」
反射的にエルマーが汚い言葉で悪態を吐いたが、その場全員同じ心境だった為、誰もそれを咎めなかった。そして微妙に空気が重くなる中、アルティナが真顔で話を進める。
「それから近衛騎士団は、基本的に各地を治める貴族達からの推薦で集まる者を、選抜して採用しています。自領から多くの騎士が採用になれば、それだけその領地に箔が付きますから、各家がこぞって腕自慢の人間を送り込んでいるのは、皆様ご承知の通りです」
それを聞いたバイゼルは、途端に鋭い視線をアルティナに向けた。
「疑わしい家から送り込まれた者は、主家の意向に応じ易いと?」
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