291人が本棚に入れています
本棚に追加
そこでかつての直属の部下に向き直ったアルティナは、真剣な表情で謝罪の言葉を口にした。
「カーネル。引継ぎも無く、急に後を任せて申し訳なかった。色々大変だったと思う。仕事上、支障は無かっただろうか?」
その問いにカーネルは背筋を正し、緊張した面持ちで応じた。
「確かに、少々隊内で混乱があった事は事実ですが、それは既に収束しておりますし、以前からの業務を滞りなく進めております。ご安心下さい」
「そうか。カーネルに任せておけば大丈夫だと思っていたが、それを聞いて安心した。これからも頑張ってくれ」
「隊長……、順当に逝くなら、私の方が遥かに先だった筈ですのに」
アルティナが笑顔で激励すると、感極まったらしい彼がじわりと涙腺を緩ませて呟いたが、それを聞いた彼女は一回り以上年上の相手を、苦笑しながら窘めた。
「カーネル。今の緑騎士隊隊長はお前だ。私を隊長呼ばわりするな」
「ですが」
「それよりも、ケイン経由で頼んでいた内容は、全て調べ終えているか?」
「……はい、勿論です。こちらをご覧下さい」
アルティナがかつての顔と口調で尋ねてきた内容に、カーネルも余計な感傷は瞬時に打ち消して仕事の顔に戻った。そして封筒に入れて持参してきた何枚かの書類をテーブルの上に出し、全員が見える様に広げる。
「カーネル隊長、これは?」
怪訝な顔で尋ねてきた青騎士隊長のガウェインに、カーネルが淡々と内容を説明した。
最初のコメントを投稿しよう!