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「確かに兄の眉間の皺の、三本のうち一本は私のせいでできたと認識しておりますが、四本目が常在する事態にならない様に心がけます」
「そうして貰いたいな。最近、あいつの部下が気の毒で仕方が無い」
思わずバイゼルは失笑してしまったが、アルティナは淡々と隊長達を見回しながら警告を発した。
「ナスリーン隊長の事だけ言っていられません。今、皆さんの身に何かあったら、嬉々としてグリーバス侯爵が後釜を押し込んでくるでしょうから」
それを聞いたエルマーが、思わず顔を引き攣らせる。
「おいおい、アルティン。冗談にしても」
「私は本気です。特にカーネル、暫くは身辺に注意しろ。それから緑騎士隊内部でも通常業務を任せる者達には、公爵達の調査に回した者達は他の調査に従事していると思わせておけ。敵を欺くにはまず味方からという言葉もある」
「了解しました。肝に銘じておきます」
彼女の真剣な表情を目の当たりにしたカーネルは、かつての上司以上に気迫溢れる顔付きで頷いた。アルティナはそれに軽く頷いてから、チャールズに向き直る。
「それから、白騎士隊の次に狙われやすいのは、どう考えても黒騎士隊でしょう」
その指摘に、黒騎士隊を預かる立場の男は、精悍な顔を盛大に歪めながら同意した。
「確かに、そうだろうな……。黒騎士隊は王都内の警備と治安維持を受け持っているから、王都内に常駐している。国境沿いの守備と巡回を任務とする赤騎士隊と、王家直轄領の守備と巡視を担う青騎士隊もローテーションを組んで王都に戻って、ここでの勤務に組み込まれているが、王都内でごそごそ活動するなら、うちの中から切り崩すのが手っ取り早い」
しかしさすがに隊長を務めているだけあって、気持ちの切り替えは早く、自分の片腕である男に視線を向けた。
「ケイン、お前も気を付けろよ? 妻と妹を差し出して、周囲にはばっちり王太子側と認識されているだろうし」
そう警告を発したチャールズだったが、ケインは如何にも面白くなさそうな口調で言い返した。
「今の、非常に誤解を招く様な言われ方は甚だ不本意ですが、自分の立場は十分承知しております。それに三千名を抱える一番の大所帯の赤騎士隊や、千名を数える青騎士隊と比べて、うちはたかだか五百人強。これを御せないとなったら、私と隊長の力量が問われる事態になりますから」
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