カウンセラーの白衣

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 ルームに入る。  ソファーに座っていたのは小泉夫婦。新規のクライアントだ。  白を基調としたルームは美純が設計したもので、僕は青を多少は入れたかったが、彼女が発注の際に書き換えた。家具もそうだ。ソファーに、テーブルに、本棚に、アロマグッズだけは僕が選んだ。あと、窓辺に置く色とりどりのパンジーたちもそうだ。  「お待たせしました。カウンセラーの小豆晴(あずき はる)です」 「はじめまして、小豆先生」  二人はわざわざ立ち上がり、手を差し出す。僕は応じ、向かいの椅子に座った。しばし世間話をする。笑顔で時折微笑み合っているので、仲は良さそうだ。  奥さんの真弓さんは茶が混じる黒髪が肩まで伸びている。元雑誌モデルらしく、透明感ある肌やネイルされた手先を見ると40代には見えない。旦那さんの浩之さんは短髪の銀髪だ。白髪かと思ったら染めているようだ。ダイヤが光る高級時計から見ても、白い歯をこぼす笑顔からも自信が伝わってくる。仕事が上手くいっているのだろう。 「今日はどのようなお話をされに?」  僕は直接、「問題」や「相談」といった言葉は使わない様にしている。使ってしまうと、クライアントが相談内容に重みを感じてしまうからだ。基本はハードルを下げていくことが鉄則だ。
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