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……わかっているのだ。
挑発に乗ってはいけないと。
もう少しで沸点に触れそうになるが、私の方が年上だ。
彼の挑発なんかに乗るものか。
私は唇を真一文字に結んで鼻で大きく呼吸した。
「そりゃ、お前、やばいんじゃねーの? もっと危機感持てよ」
その瞬間、結んだはずの唇が一瞬開きかけた。
このまま勢い余って開いてしまえば、私はここが会社で、社長室であることも忘れて彼に叫ぶだろう。
「碧斗! いい加減にしなさい!」と。
幼い頃、私がいつもそう言っていたずらをする彼を叱っていた時のように。
しかし、私はその言葉を飲み、引き攣る口角を何とかコントロールする。
「……社長。私を怒らして何が面白いんですか?」
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