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この錠前策に対しては、当初、敗北が続いた。しかし、インターネットからピッキングの知識を得た私は、すぐにクリップ一本で解錠し盗むことができるようになった。まあ、百均の南京錠だから当然だ。
解錠され、中身の消えたケースを突き出し、妹は「お兄ちゃんがやったんでしょう」と言い募ったが、「知らないな。空き巣にでも入られたんじゃないか」と言い抜けた。妹は、当然「わたしのプリンだけピンポイントで盗んでく泥棒がいるかっ」とツッコミを入れたが、「下着だけを盗む泥棒なんてのもいるからな。まあ、それの亜種だろう」と私が切り返すと、ぐぐと唸りを上げたあと、憤然とした様子で私に背を向け、去っていった。
その次に講じられた策は、私にとっても反省点の多いものとなった。
妹は、その友人にプリンを匿ってもらうことにしたのだ。
妹の交友関係などに気を払っていなかった私は。やはり、負け続けた。それから、シスコンの謗りを免れないような(断じて違うが)綿密な調査の結果、プリンの隠し先となっている友人宅を突き止めた。が、事情を知るそこのご母堂に門前払いを食い続けた。
そこで私は、まず、妹の携帯のバッテリーを盗み、すぐに妹に連絡がつかないようにした。そのうえで、ご母堂に「妹が危篤なんです。末期のプリンを求めています。今すぐ、返してください」と言った。いわゆる、『死ぬ死ぬ詐欺』というやつである。
純粋な性格をしていたご母堂はすぐにプリンを返してくれたので、私はほくそ笑んだが、その後がよくなかった。
ご母堂は、妹の友人を呼び集め、死に目に会おうと、自宅に雪崩れ込んできたのである。妹は随分交友範囲が広いようで、十数人もの人々が訪れてきていた。自宅でバッテリーを探していた妹は、唖然とした。
その後、二人で散々に謝ることになったのは言うまでもない。友人を巻き込まないというルールが設けられたのは、そのとき以来である。
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