ふざけていた

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あれは、ただふざけ合って騒いでいただけだった。学校帰りの駅のホーム、友達とワイワイ騒いでいた。ふと騒いだはずみで友達の一人とぶつかり、その子がホーム下に落ちた。キキキィという電車のブレーキの音がいまでも、はっきりと耳に残っている。その場にいた他の友達は、私を庇って、その子がスマホを見ながら歩いていて誤って落ちたと証言した。実際、その子は歩きスマホをしながら私たちと喋っていたので、大人は誰も私を疑わなかった。 あれから6年後。 普通の会社に就職し、普通のOLになり、家に帰るためホームで電車を待っていた。すると制服姿の女子高生の集団とすれ違い、その中の歩きスマホをしていた子とぶつかった。「あ、ごめんなさい、おばさん」 その子はすぐに謝ったが、ボケっと電車を待っていた私は、何か引き寄せられるようにふらふらとホームの下に落ちていた。 その子がホームの上から慌てて私に手を伸ばす、 「危ない、早く上がって」 だが、私は、一瞬躊躇した。その手を伸ばした子の顔が、あの、高校のとき私がぶつかった友達の顔そっくりに見え、再び、電車のキキキィという急ブレーキの音を私は耳にしていた。
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