2 最後に交わした約束

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 最後に交わした会話がよみがえる。 「どうしよう、瞬。緊張してきた」  話す声が震えてるのが自分でもわかった。 「紗代でも緊張するんだ」  スピーカー越しにいたずらっぽい声が返ってきた。 「ちょっと、可愛い幼なじみが助けを求めてるのに、ひどい」  少しむくれると、 「ほら、そうやって返せる余裕があるから大丈夫だ」  と力を込めて言う。わざとからかって、リラックスさせようとしてくれているのを感じた。他の人に出来るさ大丈夫だよなんて励まされると、よけいに緊張する私の質を、ちょっと悔しいくらい彼はよくわかってた。 「ありがとう」  ぼそっとつぶやいた。はは、と笑い声が聞こえる。 「急に素直になって、可愛いやつ」  いきなり可愛いなんて言われてドキリとする。 「か、可愛くなんかないもんっ!」  苦し紛れに言い返しても 「さっき自分で可愛いって言ってたじゃん」  と切り返される。瞬にはかなわない。もう話題を変えてしまおうと、話しをふった。 「それよりさ、明日会えない? 受賞のお祝いして欲しいな、なんて」 「もちろん、いいよ」  いつもそう。いきなりでも唐突でも私のわがまま聞いてくれて。 「それでね、言いたいことがあるの」  伝えよう、この気持ち。ずっと前から言えずにいたけど、もう、素直になって言わなきゃ。 「何なに、今じゃダメなのか?」 「今はまだ」  明日までに心の準備するから……。 「まあいいや、おれも言いたいことあるし。明日楽しみにしてるからな」  そこまで話して電話を切った。  あの日事故に遭わなければ、次の日じゃなくてあの日に会っていたら、彼はこんなことにはならなかったかもしれないのに。
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