第1章

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「えっ。だって、全部と目線が合う場所を知りたかったんだろ?そうすると、目のところに画鋲で紐でも固定して交わる場所を探すのかなって。肖像画が破れたらどうしようかと心配してたんだが、杞憂だったね」  あっさりと簡単な検証方法を言う見延に悪気はない。今も優しい笑顔を浮かべているだけだ。 「――我々は計算が命です」  桜太は思いつかなかったと言えるわけもなく、そんな虚勢を張るしかない。たしかに交わる点さえ解れば自慢できる内容なのだ。何も三角形を作り出す必要はない。 「そうだよな。いやあ、さすがは理系の中の理系。科学部は違うねえ」  見延は嬉しそうにそんな言葉までくれる。メンバーは小さな敗北感を味わっていたのだが、なるほど理系らしい手段だったかと納得した。たしかに点だけ教えるならば吹奏楽部にも可能だ。 「おおい。動いていいか?しかし、あの白髪のおっさん誰だよ。あいつが変な方向を見ているから謎だとか思われるんだ」  最後の最後で亜塔が総てを台無しにすることをぼやいていたが、科学部のメンバーは聴こえない振りを決め込むのだった。
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