第1章

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 亜塔が真ん中の白髪という人物はこの絵の中のキーマンであることは間違いない。ポイント探しから離脱した六人がじっと見つめてみると、この人物は顔は右を向いているのに視線は左を向いているのだ。だから頂点となる位置が左へとずれてしまう。 「きれいな正三角形ではなかったか。なるほど、不思議に思うはずだ」  莉音が勝手に納得してしまう。おそらく情報提供者の穂波は三角形など考えていない。しかし全員が三角形を思い浮かべていたので突っ込みはゼロだった。 「目が合ったぞ」  亜塔が手を挙げた。本来ならばここで検証終了のはずだ。しかし科学部のメンバーにすれば、このいびつな三角形が気になって仕方がない。 「辺の長さを出したいんで、そこに立っていてください」  あまり亜塔に引っ掻き回されたくない桜太が指示した。すると亜塔はそんな意図に気づくことなく大人しく待機する。 「まずは底辺を出さないとな。しかし一枚当たりの絵の長さは必要ないのか。ちなみに20センチだけど」  いつの間にかメジャーを手に絵の幅を測っていた楓翔が呟く。もう亜塔を捨ててくるとはさすがだ。 「じゃあ、目の位置から測定しよう。こっちを押さえるから千晴、向こうを頼む」  楓翔がメジャーをくれた千晴を指名する。測りたいだろうとの気遣いだが、千晴にすればいい迷惑であった。しかし文句は言わずに手伝う。 「93」  しっかり測った千晴がメモリを読み上げた。 「このままの状態で三角形を測るのもあれだ。亜塔との距離を出して直角三角形にして斜辺を出そう」  絵が貼られている掲示板の横にあった黒板に数値を書き留めていた莉音が思いつく。 「そうだな。三平方の定理を使おう」  芳樹が頷いたので、楓翔は早速亜塔の横に行く。千晴はその直線上に当たる位置に移動した。
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