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ミルク色のウサギの耳と、純白の翼、フワフワとした、腰までの長さの銀髪を持つ少女。
彼女の名はレイラだ。
ただ、今のレイラは、その幼い顔に隈を作り、力なく笑っている。
そんなレイラの目下の課題は、悪魔の恐怖に打ち克つことであるらしい。
悪魔とは、顔が不気味な黒い紋様に覆われ、紫の眼球に赤い瞳を宿す、人型の生き物だ。
そいつらは僕達人間と敵対関係にあり、レイラにとって、最大の恐怖の対象でもある。
そして、最近のレイラは、毎日修練所に赴いては、恐怖に慣れようと頑張っているようだった。
悪魔の絵を描いてみたり、暗闇の中を堪えようとしていたり…とにかく色々なことを試しているということは分かっている。
問題があるとすれば、それは僕らが心配だということだ。
随分と根を詰めて恐怖対策に取り組んでいるものだから、中々それを直接言うこともできない。
日に日にやつれてきているレイラを、皆止めたいと思っていても、本人が笑って受け流してしまう。
というわけで、ただ今の僕らの議題は、『レイラの修行方法について』だ。
「もう、一週間になるわね…」
重い空気は、ため息を誘う。
レイラは、僕らが心配をしているなどとは思っていない。
だから、僕達に様々なアドバイスを求めてきているのだが、そのたびに、なぜかおかしな方向にずれて状況が悪化している。
「僕のアドバイスが悪かったのかなぁ…嫌いなものを触れる努力をすることからはじめるように言ったら、魔物を呼び出して触ろうとするんだよ…」
そう言って、僕は頭を抱える。
「いや、マディン、お前が悪いわけじゃない…最初、あたしが簡単なものからはじめたらいいっていう曖昧なことを言ったのがまずかったんだ…」
そう言ってもえぎ色の髪をわしゃわしゃと掻き回す女性は、僕の親友、パーシーだ。
パーシーのアドバイスによって、レイラは見ているだけで鬱になりそうな悪魔の絵を描く、という行為を思いついたらしい。
「それを言うなら、私も、状況の想像からはじめたらいいって曖昧なことを言ったわよ」
投げやりにそう言ったのは、僕らが忠誠を誓った王であり、大切な友であるシェラだ。
そのアドバイスのせいで、夜な夜なうろつく亡霊騒動が再び勃発しそうな状態になっている。
「とにかく、この状況を打開しますよ!」
部屋に重い空気が漂う中、透き通るような声が響き、ようやく全員が顔を上げた。
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