第1章

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 N駅から在来線に乗って四十分、目的の駅の名がアナウンスされ、座席を立つ。 ここは毎年夏の最高気温ランキング一位もしくは上位に常時、名前の出る街。  今日は、この街で器を作るために来た。  肩から落ちそうなカーディガンを上げ、 「さて、と」  電車のドアが開き、車外から一歩踏み出した足にからみつくような熱と湿気。ドアから外に出る体の部分一つ一つに感じる熱。 「……マジか」  思わずつぶやく。 覚悟はしてきても、やっぱり現地にくるまではここまでとは思っていなかった。  駅を出てすぐ、ご丁寧に温度計があり、三十六度越え。それを見て更に体感が上がる。駅前なのに人気が少ないのも、なぜか、テレビ局の社名の入った車が数台止まっているのにも不安が募る。  地面の照り返しも半端なく、しばらく瞳を細くする。サングラスもやっぱり、あったほうがよかったか。着ている長袖のカーディガンは日焼け防止にはなるが、その分さらに体が暑い。せめてとボタンを外す。
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