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勇者様だったらこんなとき、しっかりと幌を掴むんだろうな。
諦念と失笑。そして視界は、明度を上げ始めた夜空で埋め尽くされた。
その美しい光景が、酒の臭いが残るむさ苦しい顔によって遮られる。
俺の腕を掴み、釣り上げるようにして馬車の荷台に飛び込ませた戦士が、快活に笑いかけてきた。
改めて、自分が転がっているのが轍の残る道ではないことを確認する。小刻みの振動は、確かに車輪を通して伝わっている。
「酒場の兄ちゃんじゃないか。買い出しかい」
「ええ、ちょっと勇者様を見つけに」
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