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「しかし、どこもかしこも魔物で溢れてきてたな。あれからもう3年経ったのか」
「あれから?」
「ああ。えっと……そう、勇者が死んで3年」
「おいおい、勇者が死んだのは2年までだろ。もう酒が回ってきたのか」
何気なく交わされていた雑談だった。しかし、この会話と同時に、店全体にピリッと電気が走ったような気がした。
「いや、ちょっと待て。勇者様が死んだのは去年の話だろ」
離れたテーブルからくたびれた商人風の男が口をはさんだ。
「バカいうな。こんなことを間違えるわけがない。3年前の話だ」
「おい、俺がボケちまってるってのか。1年前の話だろ、それ」
いつのまにか、テーブルを越えて誰もがこの話題に乗っていた。
しかし奇妙なのは、勇者様の死という世界を揺るがせた出来事について、みな年数が食い違っているのだ。傍目からみていると、1年から3年のあいだで各々の主張が飛び交っている。
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