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やがて酒の勢いも手伝い、あちこちで口論にまで発展し始めた。端のテーブルでは、筋骨隆々の戦士と顔を赤らめた爺さんが小突きあいをしている。
「ちょっとみんな、落ち着いてくれ」
声を張り上げるが、酒場全体でボルテージが上がっているせいで、声は全く通らない。
とりあえず、手近なところから口論の仲裁に入ろうとしたそのとき、破壊音が響いた。
マスターだった。酒場のマスターとしては持て余す膂力を活かし、座椅子を拳の一振りで破壊していた。
歴戦の冒険者たちも唖然とした表情を浮かべ、場は静まり返った。
「うちは酒を飲む場所だ。討論なら役場でやってくんな」
マスターのつぶやくようでいて響く声に、異を唱えるものものはいなかった。
冒険者たちはちびちびと残った酒を口に運ぶなり、そそくさと勘定を済ますなりして、座は一気に白んだ。
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