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魔神の子…魔王の誕生が、魔界の上級悪魔達の耳に届いたのは、つい先程。そしてその落とし子が人間界にいるということ。その見届け役として、悪魔大参謀が人間界に降りたということ。
この一大事件は、静かに…しかし確かな戦慄となって魔界を駆け巡った。
得る情報は得た。メルガディスは、部屋を去ろうと踵を返す。その背中にか、それとも一人言か…部屋に、怪しく声が響く。
「天界では、天界の神が死にその子が力を受け継いだらしい」
部屋の実験台…そこには、人間の姿をしているものが…いや、人間が寝かされている。魔界にいるはずのない人間が。
「魔界では、魔神様の力を受け継いだ落とし子が人間界へ」
手首、足首、体の部位を…縛られ動けない。口を塞がれ喋れない人間に、ゆっくりと近づく。その手に謎の液体が入った注射器を持って。
「天界と魔界…同時期にこの二つの大事件」
「んんー!!」
喋れない代わりに、嫌だと必死に訴える人間の顔は恐怖に歪んでいるが、その顔を見て悪魔は笑みを浮かべるばかり。その様子にメルガディズはため息をつき、出口へと向かう。
「…そう遠くないうちに、嵐が来るかもしれんな」
何かを予言するような言葉と、腕に何かの液体を流し込まれる人間の絶叫を背に…メルガディズは部屋を去った。
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