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-ここは、地上より遥か上空に位置する場所。人間の住む世界を観察しながらも基本的に人間界とは干渉しない世界。
-天界-
ここでは、その背に純白の翼を持つ人…いや人の姿をした生物が暮らしている。
天使…人々はそのような姿をした者を、空想上の生き物としてこう呼ぶ。
しかし彼らは実際に存在している。…人間界の監察者として。そして神の使いとして。天界に暮らしている。
神とは…この世の創造主。全てを造り、司ると言われる存在。神たる者の前には、天使でさえ、一部を除いて軽々しく近づくことすら恐れ多い。
現神の名を、ディウオス。神として厳しく天界を取り締まり、情に流されない一界の頂点に君臨する者として、その威厳を示してきた。。
しかしこの時天界では少々…いや、一大事件ともいえる出来事が起こっていた。
それは、ディウオスの命の灯がいままさに消えようとしているということ。つまり、神の死である。
いかに全能なる神であろうと不死ではない。いかなる傷や病とも無縁に思えるが、その実、迫り来る老いには勝てない。既に万年以上を生きている神ディウオス。
だがその長き年月、そしてそれに加え、年月に伴い増える一方の膨大すぎる知識、情報量は…確実に、その体を蝕み衰弱させていた。
「お母様!お母様しっかりして!」
上級天使達に看取られながら、ベッドに横たわるディウオスに呼びかける幼き少女の声。まだ幼く見えるこの少女、人間界の尺度で測れば小学生低学年といったところであろう。
しかしこの少女、既に百年は生きている。
ディウオスを母と呼ぶこの子供…そう、神の子だ。
そして死に行く親は、子に自らの力を譲渡する儀式を執り行う。
それが、神の世代交代である。
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