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神の世代交代…あれから幾つの年を重ね、天界の大騒動もようやく落ち着きをみせた頃。
「うぅ…うがぁ!もうやってられない!」
城とも屋敷とも表現できる、とにかく巨大な建物から聞こえてくる大声。それを聞いた近隣の天使達は、今日もまたか、と微笑ましく笑う。
「毎日勉強勉強勉強…もうやだ!やりたくない!」
とある一室から聞こえるのは、少女の声。やだやだと首を振る度にその美しい金髪も揺れる。
「…とはいっても、これは逃れられない宿命なのですよ」
それに答える女性の声。眼鏡を掛けた彼女の頬には少々しわが入っており、声にも若干の老いがみえる。
白髪の混じった金髪…例えるなら若々しい老婆、とでも言おうか。しかしその姿は全く老いを感じさせないほどに凛とした佇まいを見せている。
「神の力を持つ者として、この程度の知識…いくらあっても足りませんよ、エルシャ様」
勉強にすっかりやる気を削がれた少女…前神ディウオスの愛娘、神の子エルシャは、その言葉に口を尖らせる。
「そんなこと言ったって…何よこのキョーヨーガク?テーオーガク?って!セイジだのカブカだの、人間界のことなんて人間に任せればいいじゃない!」
「そうはいきません。この世の全てを司るということは、この世の全ての知識を知っておかなければいけないということ。過去に何があったか、現在何が起きているか、そして未来に何が起ころうとしているかに至るまで。正確に」
過去、現在、未来…全ての知識。それはあまりに、膨大過ぎる量だ。それこそ途方もない…人間の一生をかけても軽く及ばないであろう知識量。しかも正確に把握する必要がある。
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