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「ねえねえザー、私お菓子食べたい」
マンガ片手に、お菓子を要求するエルシャ。いくらはしたないと注意しても直らないこのじゃじゃ馬娘に、ザーは苦労が絶えない。
「お行儀が悪いですよ。それに食べ過ぎです。昨日だって…」
「いーじゃん少しくらい!ほら、糖分は疲れた頭にいいっていうしさ!」
全てのお菓子に糖分が入っているわけではないのだが…しかしエルシャの言うことも的外れというわけではない。
はぁ…とため息をこぼすザー。今日この流れだけでいくつため息を漏らしただろう。とはいえ根を詰めすぎて倒れてしまっては元も子もない。
「…わかりました、仕方ありません。少しだけですよ」
そう告げて、ザーは部屋を後にする。エルシャのことは彼女が生まれたばかりの頃から面倒を見てきた。生まれてから今に至るまで、その成長の過程を見守ってきた。
普段は厳しい彼女も、なんだかんだエルシャには弱いのだ。
エルシャの母親、前神が亡くなってからは、それこそザーがエルシャを育ててきたといっても過言ではない。ディウオス亡き今、エルシャの育ての親はまさしくザーだ。
子に恵まれなかったザーは、おこがましいとは思いながらもエルシャをそれこそ我が子のように感じている。エルシャの方も、口や態度には出さないがザーには母の面影を重ねている。
血の繋がりこそないものの、エルシャはザーにとって我が子同然。そしてザーはエルシャにとって確かにもう一人の母だった。
だが、エルシャのやんちゃっぷりはザーにとって時に微笑ましく、時に困りもので…
「…はぁ、全く…」
しばらくして部屋に戻ると、見事に部屋はもぬけのだった。勉強とはいえ誰か監視をつけてるわけでもなし。もしそんなことをしようものなら、監禁だの牢獄だのとエルシャが何を騒ぐかわからない。
逃げようと思えば逃げられる環境ではあるが…
「また、あそこですね…」
困りものではあるが、宛がないわけではない。今日何度目かのため息を漏らしながらも、ザーは宛のある場所へと向かっていった。
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