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-時を随分と遡り、天界でディウオスが亡くなったのと同時期。天界の大事件の裏で、とある場所で別の大事件が起きていた。
ここは魔界…天界と対を成す、異なる世界。
魔物、魔獣、悪魔…闇に生きる者が住まう場所。
天界で神がいるように、魔界にも神はいる。闇を司る、この世の全ての負の念を呑み込んだかのような絶対的な最悪の存在。悪魔はその存在を崇め、こう呼ぶ。
-魔神と。
「本当なのですか?魔神様の落とし子が人間界に…?」
魔神の姿を見た者は、ほとんどいない。そもそも下級悪魔の目に触れられる存在ではないのだ。
魔神に近くある存在…それは悪魔四神と呼ばれる四体の悪魔。そして大参謀と呼ばれる悪魔四神以上に地位が高い悪魔など、上級悪魔のその中でもほんの一握りだけである。
そして今、この魔界では事件…いや大事件が起きていた。最も、天界の大事件のように公にされているものではなく、限られた者達しか知らない事件。
話しているのは、悪魔四神きっての策略家。名をメルガディズ。そしてそれに答えるは、片手に紫色の何やら怪しげ液体の入った瓶を持った猫背気味のシルエットの悪魔だった。
「あぁ、間違いない。これは大事件だ…クフフ…」
怪しげな男は、怪しげな笑い方で答えながら、瓶を見る。すると瓶…いや中の液体がぶくぶくと泡立っていく。それがだんだん大きくなり…やがてはボン、と大きな音を立てて爆発した。
「…また失敗か、やれやれ」
黒焦げになった顔のまま、ため息を漏らす。実験が失敗した…その事実に、しかし落胆はない。何故ならば、失敗という成果を得たからだ。
曰く、あらゆる事柄において無駄な失敗などありはしない。
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