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「なぁ、サッカー部のアイツ知ってる?」
「え? 武村のこと?」
「違う違う。女子マネの」
「ああ~小島琉璃(こじまるり)な」
(……ああ、また言ってるよ)
私は、サッカー部の女子マネージャーをしています。
けれど、悩みが一つありました。
それは、人一倍汗をかいてしまうこと。
部員よりも汗をかいてしまうので、笑われてしまったり、ヒドい時は何で部員より汗かいてるの? と、サッカー部の練習を見に来る女子達から怒られてしまうことがありました。
私だって、好きで汗をかいているわけじゃないのに。
そう思っても、私はただ耐えることしか出来ませんでした。
普段からじんわりと汗が出るタイプで、隣にいる人にしたら、熱気が凄いと思うけれど、特別肥えているわけでもなくて、体型は少し痩せているくらいだと思う。でも、運動したり、緊張をすると、汗が滝のように流れ出てしまうのです。
今日も部活が終わり、私は片づけをしていました。
「ねぇ、アンタ」
顔を上げると、私より背が高くて、スタイルの良い女子が数人いました。
彼女達は私を見ると、クスクスと笑います。
「汗びっしょりじゃん。そんなんでよくマネージャー出来るよね。それでもモテると思ってんの?」
また、馬鹿にされているんだ。
悔しい。でも、私に言い返すことなんて出来るはずが無く。
「そんなことは……」
そう言うしかありませんでした。
皮肉とばかりに、言葉の代わりに流れ出る冷や汗。
女子達は、声を出して笑うと、そのまま去ろうとしました。
そんな時でした。
「モテてるよ」
顔を上げると、女子達の後ろには、サッカー部員の武村くんがいました。
「た、武村くん!」
武村くんを見た途端、女子達の態度はしおらしくなりました。
武村くん、サッカー強いしかっこいいから。
みんな、武村君を見に来てたんだ。
「毎日俺達の使った道具片付けてくれるし、不器用だけど、小島は一生懸命なんだ。第一、汗ってのは、一生懸命頑張ってるヤツが流すもんだ。汗の一つも流れないアンタ等と違ってな」
武村くんの言葉に、女子達は、顔を見合わせていました。
「……行こ」
女子達がいなくなって、残されたのは、私と武村くんの二人だけ。
「有難うございました」
頭を下げたその時、武村くんの声が聞こえてきました。
「つーか、俺は好き。小島のこと」
「え……」
武村くんの言葉に鼓動が速くなって、汗が止まりませんでした。
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