第1章

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 昔から、先生に怒られているときも、怒られている自覚はあるのか、なんて、二重に怒られることはよくあった。 本当は飲みになんて行かないで、早く家に帰ってごろごろしたいけれど、断って悪く言われるのが恐いから、意に反して飲みの席に参加することも多い。 もちろん、そうは見えないように上手くやっているつもりだけれど。 仮面をかぶって、いい人ぶるのが癖になっているのだろう。嫌な性格だなと思う。 それに、褒められることなんて一つもしていない。 自分で言うのもなんだけど、結構真面目に仕事に取り組んでいる。 今の仕事にやりがいも感じている。 けれど、まわりが勝手にいいように解釈してくれているだけ。 この歳で色事にあまり縁がないせいか、浮ついた噂がないからそう見えるだけだろう。悲しいかな、やはりネガティブな分析しかできない。  ……しょうもないな。自己否定すら投げやりになる。まあいい。とにかく、残りの仕事を片付けてしまおう。  ――こうして、いつもと変わらぬ夜が更けていった。 「お疲れー」 「おつかれさま~」  カチン、と軽快なグラスの音が響く。今日は気心の知れている友人3人と、無礼講の飲み会だ。高校の同級生で特に仲の良かった、奏恵、朱莉、冬子の同性だけで開かれた飲みの席は、おのずと開放的な空間になっていた。  プハーっと一気にグラスの半分ほどまで勢いよく流し込む人もいれば、バリバリと豪快にからあげを放り込む人もいて。 大和撫子のような女性らしさとは到底かけ離れているが、これが現代のリアルな女性像なのだと思う。 ……私のまわりでは、というのも付け足しておこう。 「最近どうよ?」 「仕事ばっかしてるけど」 「やばいよねぇ、あたしもだ~」 「当然、あたしも右に同じでございます」  キャハハ、と混雑した店内でも通る黄色い笑い声だけは、唯一女であることを実感できる。顔を見合わせて溜息をつくことすら遠慮しない、アラサー女のストレスの捌け口の場は、意外と限られていた。 「うちら、そろそろ28だよ~。やばくない?」 「大丈夫! まだ28までは、半年以上あるじゃない」 「確かに!」  若くてピチピチの容姿でちやほやされていた数年前と比べて、もはやもて余されてしまう存在になってきたのでは、と嘆く。 そんな中、唯一、恋愛沙汰の話のない私が異論を唱えた。
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