第1章

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 相田さんと彼氏がタクシーに乗車したのを見送った後、さて私たちも帰りますか、と瑞樹に声をかける。 タクシーを止めようとしたけれど、通り過ぎるタクシーは乗車中のランプが点灯している車ばかりで、なかなか空車のタクシーが走ってこない。 「全然タクシー来ないね」  困り果てていると、空車のランプが見えてきたらしく、瑞樹が手を挙げた。  目の前にタクシーが停車すると、すぐに乗り込んだ瑞樹が「お前も乗れば」と、一緒に乗るように促した。 相席に二の足を踏んでいると、 「早く。他の車の邪魔になるだろ」  瑞樹の言葉に追い打ちをかけるように「お客さま、乗車されますか」と運転手さんから声がかかる。 すると、こちらの返事を待たずに、車の中から腕をグッと引き込まれる。 有無を言わさず、乗れ、の合図だった。 「曙橋まで」  行き先を告げる瑞樹の言葉に、はっとした。 「どこ行くの?」 「どこってお前んちだけど」 「えっ、いいよ。瑞樹の家に先に行ったらいいじゃん」 「お前んちのが近いだろ」  狼狽える私を不思議そうに見ている。 そうだ、私が引っ越したことを瑞樹が知っているはずがない。 こちらの都合なんて知る由もなく、タクシーはどんどん進んでいく。 焦りを隠せなくて、運転席に体を近づけた。
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