第1章

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「やばくないよ。やめてよ、そんなの言ったらあたしが一番やばいよ」  皆、一様にこちらに注目する。 「なんでよ?」 「そうだよ。なんで~」 「考えてもみてよ。あたしだけじゃん、独り身なの」  ジリジリと煙草に火をつけ、フーと深く煙を吐く。可愛げのない受け答えと擦れた対応に、ああ~、と合点がいったように声をあげる友人たち。 「ふっ、やめれー。そんな納得されても悲しいわ」  ははっ、と乾いた笑いを浮かべた。自虐ネタを明るく話す様子は、ネガティブな本質をよく表していると思う。 「それだよそれ。あんた、ネガティブすぎるんだよ」 「そんなことわかってるよ。わかってるんだけどねえ。うーん……」 「男にしてみたらさ~、やっぱり可愛い子のが受けがいいんだからさ~、こう、なんていうの。もっと高い声で話すとか」 「何それ、ばかにしてるでしょー。人が気にしていることをずけずけと!」 「一理あるわ。百合子せっかく顔可愛いんだからさ、黙ってればある程度いけるくない?」  「それだ」と口々に同意する友人たち。はっきりしたもの言いながらも、励ましてくれようとする気持ちが伝わってくる。 「喋るなってか。あたしからそれとったら何も残んないな。中身がないの浮き彫りになってくるのが、また泣けてくるんだけど」 「はは、うちらは面白いけどね。ウケるような話、笑顔で話ししてたら、そりゃもう女芸人みたいで」 「女芸人に謝れー」 「そういうんじゃないから」 「はい、すみません」  軽口を叩いて、テンポ良く会話が続く。自虐ネタを振ったのは自分だが、グサグサと荒んだ心に突き刺さる。  そういえばさあ、と友人の朱莉が口を開く。 朱莉は、一般的な女性にしては高めの身長と細身の体形で、まるでモデルのようだ。 漆黒のまっすぐな髪の毛は意思の強い高嶺の花のような印象を受けるけれど、実は乙女思考なところが、仲間内でいじられている理由の一つだ。
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