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タツオは自動小銃を背中に回し、弾倉を背嚢(はいのう)に放りこんでいった。実際には敵に発見され、銃撃戦になるようでは、この訓練の敗北は必至だろう。身軽なほうがいい。予備弾倉はガムテープで上下逆さに張りつけた2個だけにしておく。
「この拠点はジョージに指揮をまかせるよ。ぼくは離脱地点を探しにいく」
「わかった、武運を」
「そっちこそ武運をね」
自分の身長ほどある狙撃銃から顔をあげて、幸野(こうの)丸美(まるみ)が女の子らしい声でいう。
「タツオさん、サイコの分までがんばって。絶対夜明けを見てくださいね」
ソウヤがぼそりとつけたした。
「ときに勇気よりも臆病さが大事なことがある。逃げろ、逆島」
タツオはそっと岩を滑りおりると、夜の闇に紛れ岩陰を伝って、戦闘地域ぎりぎりまで近づいていった。
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