16(承前)

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ソウヤが岩陰に隠れた敵を慎重に狙撃銃のスコープで狙っていた。身を隠す岩がちいさく、右肩の端が覗(のぞ)いている。頭隠して……。どこにでも粗忽(そこつ)な兵はいるものだ。戦場では雑な神経では生き残れない。ソウヤが照準をつけながらいう。 「LEDボールは照明のオンオフができるな?」  そっと引き金を絞った。人さし指の第一関節だけをそっと動かす。指のつけ根の関節を動かしてはいけない。銃身が左にぶれてしまう。狙撃銃の轟音が鳴り、肩を撃たれた敵兵が叫び声をあげた。銃弾は当たっていないが、弱レーザー光に反応して、あの兵士の肩には強烈な電撃が送りこまれているのだ。暴徒鎮圧用のスタンガンより若干弱い程度だと聞いている。タツオは快哉(かっさい)を叫んだ。 「ナイスショット! オンオフは可能だ」  ソウヤはつぎの獲物を探している。スコープから目を離し、双眼鏡で100メートルほど先の戦闘地帯を観測していた。今回は守備隊の人数がすくないせいで、狙撃手が観測手を兼ねているのだ。ソウヤがいう。 「陽動をかけるか」  ジョージがうなずいた。 「いいと思う。佐竹さんの案は?」
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