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「敵も膠着(こうちゃく)状態で動けない。思っていたより、こちらの狙撃手の腕がいいと焦(あせ)っていることだろう。まだ時間はあるが、あまり焦らせたくはない。総員突撃を受けたら、こちらはまずやられる。できることなら、敵を少数ずつおびきだし殲滅(せんめつ)していきたい」
タツオも反対はなかった。
「どんな陽動をつかう?」
初めてソウヤがちいさな家ほどもある岩のうえで、隣に寝そべるタツオを見た。
「短い間隔でLEDボールをオンオフする。暗闇になれば敵はあのデスゾーンを突破しようと、兵を送ってくるだろう。おれたちはそいつを叩く。それを何度か繰り返し、敵兵力の弱体化と逆島少尉の脱出を狙う」
ジョージが低く口笛を吹いた。
「素晴らしい。佐竹さんはなるべくして士官になった人だ。現場をまかせておくだけではもったいない」
ソウヤは目をそらし、戦闘地帯の観測に戻っている。ぽつりといった。
「現場の歩兵を悪くいうな。どんなに作戦がよくともあいつらがいなければ、成功も勝利もないぞ」
ジョージが笑ってうなずいて、タツオにいった。
「佐竹さんの作戦はぼくのとほぼ同じだ。だけど、もうひとつひねろうか。それはあとで相談しよう。タツオ、全員の情報端末を結んでくれ」
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