あの頃、君と

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夏になると、いつも思い出す。 真っ青な空にモクモクと立ち上る真っ白い雲。 滴る汗とうるさい蝉の鳴き声。 そんなものたちと一緒に甦るのは、決まって君の浴衣姿。 藍色に紫陽花柄という正統派の浴衣は君にとても似合っていて、僕はドキドキしてすぐに地面に目を落とした。 アスファルトにくっきりと映る自分の影を鮮明に覚えている。 「行こ」 そう言って歩き出した君を慌てて追いかける。 その白いうなじを見て、僕は思った。 半夏生(はんげしょう)に似ていると。
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