あの頃、君と

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*** 明るく整備された城山の中を歩いていたら、向こうから親子連れが来た。 僕と同じぐらいの歳の夫婦と3歳ぐらいの男の子。 男の子を間に挟んで、3人で手を繋いで歩いていた。 母親のおなかは大きく張り出していて、もうすぐ4人家族になるんだろうとわかる。 日本中のどこにでもいるような、ごく普通の家族。 それが羨ましく思えるのは、手に入らなかった幸せだからだ。 城山を抜けると住宅街が現れて、2つ目のカーブミラーを曲がると君の家だ。 住宅街の中の道は狭くて、時折通り過ぎる車にヒヤッとしたものだ。 久しぶりに見た君の家は、相変わらず大きくて、ちょっと圧倒される。 その庭で、花に水やりをしている後ろ姿にあのときの君が重なった。 白いうなじが半夏生を思わせる。
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